ところで、Oracle ASってどうなった? (オラクルのAPサーバーの歴史など)
ところで、Oracle ASってどうなってしまったのでしょう?サポート契約結んでいる立場として気がかりです。@satonaoki さんに訊けばいいのでしょうか?
というわけで、@btnrouge さんの声にお応えして(?)、OracleASを含むオラクルのアプリケーション・サーバー製品群の歴史と現状を簡単にまとめてみます。
オラクルのWebアプリケーション・サーバーの第1世代は、1990年代後半のインターネット黎明期に登場しました。(リリースごとに名前が変わっていますが) 最後には「Oracle Application Server」(OAS) という名称だったものです。
この頃は、CORBAや、(OASの頃には) 黎明期のJavaサーブレットなどをサポートしていましたが、PL/SQL (Oracle Databaseのストアド・プロシージャ言語) を使ってWebアプリケーションを開発できる「PL/SQLカートリッジ」が主流でした。
ちなみに、PL/SQLカートリッジ相当の機能は、現在でも、ApacheベースのOracle HTTP Serverのモジュール「mod_plsql」という形で提供されています。
- Oracle WebServer Option 1.0
- Oracle WebServer (OWS) 2.x
- Oracle Web Application Server (WAS) 3.x
- Oracle Application Server (OAS) 4.0.x
2000年代に入ると、J2EE (現 Java EE) を中心としたサーバーサイドJavaが注目され、オラクルのアプリケーション・サーバー製品の方向性も変わっていきました。
まず、前述のOASに至る第1世代の製品開発を中止し、J2EE (一部) 対応も含む、新しいアーキテクチャのアプリケーション・サーバー製品を提供し始めました。
当初は、Apache JServやOracle JVM (旧称 Oracle JServer、Oracle Database上で動作するJVM) で、J2EE一部対応を進めていましたが、1.0.2.2から、J2EEコンテナとしてOrion (http://orionserver.com/) をベースにした軽量で高速なOC4J (Oracle Containers for J2EE) を提供し始め、その後、OC4Jは、10.1.3までメインのJ2EEコンテナとして提供され続けました。
もう1つの新しい方向性は、いわゆるアプリケーション・サーバー (カスタムのWebアプリケーションの実行基盤) の枠を超えて、ポータル、BI (ビジネス・インテリジェンス)、コンテンツ管理、SOA/インテグレーション、アイデンティティ管理などの機能を1つにパッケージングし始めたことです。これは、現在の「Oracle Fusion Middleware」という製品スイートにつながっていきます。
これら第2世代のアプリケーション・サーバーの製品名も、リリースごとにどんどん変わっていますね… 基本的には、Oracle Databaseのバージョン (8i、9i、10g) に合わせて変更されています。
ちなみに、8i、9iの「i」はインターネットの、10g、11gの「g」はグリッド・コンピューティングの頭文字を取ったものです。次の「12」に付く1文字は何になるのでしょうね?
さらに余談ですが、Oracle Application Server 10g (9.0.4-10.1.3) の正式な略称が、「OAS」ではなく「OracleAS」なのは、第1世代最後のOAS 4.0.xとの混同を避けるためです。
- Oracle Internet Application Server (iAS) 8i 1.0.0/1.0.1
- Oracle9i Application Server (9iAS) R1 1.0.2.x
- Oracle9i Application Server (9iAS) R2 9.0.2/9.0.3
- Oracle Application Server (OracleAS) 10g R1 9.0.4
- Oracle Application Server (OracleAS) 10g R2 10.1.2
- Oracle Application Server (OracleAS) 10g R3 10.1.3
この頃までの経緯は、オラクル 澤井さんのブログ・エントリも合わせてどうぞ。
2008年には、WebLogic Serverを有するBEAの買収が行われ、Oracle WebLogic Server 10g R3 (10.3) が出荷されました。
「10g R3 (10.3)」というバージョンは、OracleAS 10g R3と合わせつつ、BEA WebLogic Server 10.0の次のバージョンであることを表しています。
- BEA買収関連
2009年には、Oracle Fusion Middleware 11g R1をリリースしました。これまで「Oracle Fusion Middleware」はブランド名であり製品名ではなかったのですが、11g R1からは、アプリケーション・サーバー、SOA、ポータル、BI、コンテンツ管理、アイデンティティ管理などの製品スイート全体の製品名になりました。
また、OracleAS 10g R3までは、SOA Suiteなどの他製品はOC4J上で動作するJ2EEアプリケーションでしたが、11g R1では、OC4Jは提供されず、SOA Suiteなどの他製品はWebLogic Server上で動作するようになりました。
- Oracle Fusion Middleware 11g R1 (11.1.1)
2010年には、Sunの買収が完了しました。GlassFishのオープンソース開発は継続され、米国Oracleでは、オープンソースのGlassFishをベースにした「Oracle GlassFish Server」が提供されています。
一方、WebLogic Serverも継続され、引き続き、カスタムJava EEアプリケーションやFusion Middlewareの他製品の実行基盤として提供され続けます。
さて、OracleAS 10g R3 10.1.3.xがOC4Jが提供される最後のリリースとなるので、サポートや移行についても樹になるところだと思います。
オラクルは「ライフタイム・サポート」と呼ばれるサポート・ポリシーを採用しており、製品のサポート・レベルとその期間を明確化しています。
詳しくは、次のドキュメントを参照していただきたいのですが、たとえば、(J2EEアプリケーション・サーバーとしての) OC4J 10.1.2.x、10.1.3.xに関しては、「無期限」のサポート (Sustaining Supportを永久に提供) となっています。
- オラクル > ライフタイム・サポート
-
- Lifetime Support Policy: Oracle Fusion Middleware Products
とはいえ、アプリケーション・サーバー製品としてオラクル製品を使い続けたい場合、いずれはOC4JからWebLogic Serverへの移行を行う方がいいでしょう。
そこで、OTNやマニュアル、セミナーなどで、OC4JからWebLogic Serverへの移行に関する各種情報を公開しています。また、OC4J向けJ2EEアプリをWebLogic向けJava EEアプリに移行するGUIツール「Oracle WebLogic SmartUpgrade」の提供も始めています。
- OTN > Fusion Middleware Upgrade Center
- Oracle Fusion Middleware Java EEアップグレード・ガイド 11g リリース1(11.1.1)
- WebLogic Server 11gR1 - Oracle9i Application Server からの移行ガイド 概要編